現代社会学理論研究 第19号: 【特集】「生(ライフ)の現場」に向き合う社会学理論とは何か
日本社会学理論学会編集委員会 (編集)
ISBN : 978-4-910603-37-7
本稿は、社会学における「生(ライフ)」の現場と理論の関係を探求する研究委員会の活動をまとめたものである。
以下、本書「特集について」より
一部改変の上抜粋
本書は「生(ライフ)の現場と社会学理論」というテーマのもと、現代社会における人々の営みを多角的に見つめ直す試みをまとめた一冊です。
社会学が「生」をどのように捉え、理論としてどのように応答しうるのか——その問いを出発点に、研究者たちは“生き難さ”や“異質な経験”を抱える現場に向き合い、共に社会を営むための方法を模索しています。
佐藤裕による「ルールの科学」構想、筒井淳也による理論の役割をめぐる考察、石岡丈昇によるエスノグラフィーの実践。それぞれが異なる角度から「生」をとらえ直し、社会学が持つ理論的可能性を鮮やかに描き出しています。
あえて曖昧さを残した「生(ライフ)」というテーマを通して、本書は現代社会における共生のかたちを考えるための確かな足がかりを提示します。
【本書の内容】
本書は、「生(ライフ)の現場と社会学理論」を主題とし、現代社会における「生」のあり方を理論・経験・倫理の三層から問い直す試みである。医療・福祉・労働・死生観など、人々の営みに深く関わる領域を横断しながら、社会学がどのように「生」に応答しうるのかを探究している。
巻頭の伊藤智樹「特集に寄せて」では、社会学が扱う「生」が単なる生活現象の記述ではなく、「理論」を通して共に社会を営む方法を問う営みであることが強調される。
この視点を基盤に、各論稿は「生」の異なる側面を描き出している。
ファサンの「生の政治」概念を軸にした論稿では、医療や資源配分の不平等を通じて、命の平等とその現実的格差が考察される。強制撤去の事例研究は、生体的な生活条件を脅かす社会構造を明らかにし、エスノグラフィーがその分析の鍵となることを示している。
また、「ライフチャンス」から「生そのもの」への転回が提案され、社会的条件が個人の生の形そのものに影響を及ぼすことが論じられる。
理論面では、社会学が「異質性」を前提とする知のスタイルであることが指摘され、自然科学とは異なる「非ハード・サイエンス的」理論の意義が提示される。さらに、バウマンの死の文化論を通して、死が消費社会の中でどのように無意味化されるかが分析されている。
ライフストーリー研究では、個人の語りを通じて社会を再構築する可能性が論じられ、感情労働の研究では、ホクシールドやヴァウターズらの理論を踏まえつつ、相互行為の中で形成される「自律的感情管理」が提示される。
アン・ロールズの実践理論に基づく論稿は、社会秩序の基盤を「構成的実践」に求め、経験的反人種主義理論の可能性を拓いている。
さらに、ジンメル研究の複数の論考が、形式社会学から広義の社会学への再評価を行い、相互作用や物象化の概念を再検討することで、近代社会の動的構造を新たに照射している。
加えて、三井さよによる知的障害・自閉の人々との支援ネットワーク研究は、ルーマン理論を援用しつつ、理論と実践の接続を提示し、地域支援の新たな可能性を示す。
【目次】
【特集】「生(ライフ)の現場」に向き合う社会学理論とは何か
特集に寄せて
伊藤智樹
「生(ライフ)の現場」に向き合う社会学理論の提案
――「ルールの科学」構想から――
佐藤裕
変化する社会のなかでの理論の役割とは
――同質性と異質性の観点から――
筒井淳也
生(ライフ)の二重性を捉える社会学へ
――biographical lifeとbiological lifeをめぐるエスノグラフィ――
石岡丈昇
【論文】
「実践」に基づく社会理論はいかにして可能か
――アン・ロールズによる反人種主義的社会理論を例として――
成田まお
リキッドモダニティにおける「死」
――現代社会における「死の無意味化」――
山内信明
感情労働における自律性のあり方
――ホクシールドを巡る二つの論争を通して――
崎山治男
ライフストーリー研究から見える社会像
――対話的構築主義の「誤読されやすさ」をめぐって――
堀内翔平
【書評】
漏れ落ちる生を「生きる」
(書評対象書:岡崎宏樹著『作田啓一――生成の社会学』)
金瑛
「過渡期」世代のジンメル研究の意義と時代的制約
(書評対象書:杉本学著『ジンメルにおける社会生成の理論』)
徳田剛
現場との距離感と言葉の選び方
(書評対象書:本多敏明著『「排除」の構造とコミュニケーション論的「包摂」』)
三井さよ
「捉えかえし」がもたらすオープンな何か
(書評対象書:三井さよ著『知的障害・自閉の人たちと「かかわり」の社会学――
多摩とたこの木クラブを研究する』)
本多敏明
大会記録/学会規約/研究委員会規程/編集委員会規程)/
編集・投稿規程/執筆規程・執筆規程細則/役員・編集委員会/
編集後記

